2012年RIBAゴールドメダル(王立英国建築協会が与える建築賞)の受賞者、ピーター・ズントーが今月ロンドンにてレクチャーを行った。
ソールドアウトで入れなかったが後日ツイッターや建築系ブログなどでトークの一部始終を拝見する中、印象に残っている言葉が一つ。
"Architecture is not about form, it is about many other things. The light and the use, and the structure, and the shadow, the smell and so on. I think form is the easiest to control, it can be done at the end." - Peter Zumthor, February 2013
建築は完璧で機能的なフォルムの追求ではなく、光、影、構造、匂いなど、人間がコントロールし難いエレメント/要素の融合体を空間にて如何に巧く人々の感覚に訴え、表現するかだ、と。
彼は決して新しい事を言っている訳でもなく、建築家たる者の殆どがおそらく日頃から気には留めている事を、建築家/建築ライターだらけのオーディオトリウムで言い張った。
ズントー”らしい”発言で、驚きは無いのだけれど、日々面積表やら部屋の配置、建ぺい率のマニピュレーションを前にネチネチと”空間操作”を行っている僕らにとっては良い念押しだなと悔しくも頷いている自分がいた。
「フォルムのコントロールは一番簡単な部分で、デザインの過程で最後にでもできる」と言う部分は特に、これから多くの空間をデザインして行くであろう身としては常に頭の中に入れておかなくてはいけないなと。
コントロールし難い要素の操作、交差によって生じる現象の体験 - 其れありきの機能的な建築、こそがズントーの理想の形だと思う。
選択された敷地でしか起こり得ない現象を見つけ、使い手の体験/生活をより豊かにできてこそ建築に意味が生まれ、受け継がれて行くきっかけを作る。
今までの自分の経験と照らし合わせて考えると、携わって来たプロジェクトが学校、集合住宅、図書館、会議場など、プログラムの機能性がクライエントにとって”絶対”なタイポロジーなだけに、どうしてもプログラム/空間操作先行の設計プロセスになってしまっていた気がする。
多くの使い手が日々訪れる建築だからこそ、もっとズントー式プロセスとのバランスを取って行かなければいけないな、と職場での根本的な自分のデザイン手法について深く考えさせられた。
過去に投稿した個人の作品、特にBelvedere ParkやPublic Squareはズントー式寄りだという点を見て分かる通り、仕事とパーソナルでの作品の方向性に早くも”ずれ”が生じている、という現状が今回の件でより明らかになった。
一プロフェッショナルとして、其処は改善して行かないといけないな。。
シンプルで一見ありきたりな台詞に聞こえるズントーの発言だったが、今後仕事での取り組み方にも影響を与えて行きそうな予感がする。
-lenga910
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